年の瀬、外では氷点下となり雪に包まれるミンスク。このように寒い日々が続くシーズンには、暖かい屋内での催しが増えてきます。伝統的なものでは、バレエやオペラ、コンサートなど。そして、現在ではカラオケやアニメのコスプレといった日本発祥のサブカルチャ-・イベントが人気です。今回は、この景色の一部を切り取り、新しい室内での楽しみ方をお届けします。
舞台となったのは、ミンスク在日本ニコライ堂の教会学校内。そこで日本語を学ぶ生徒さん達と共にコスプレやダンスを盛り込んだアマチュア・コンサート大会を開催してみました。といっても、経験豊富な高校(学)生コスプレイヤーに本格的に音楽を専門に学ぶ子達(学んでいた方々)も集まり、レベルの高い出し物が揃いました。
日本のヒット曲、アニメ、ドラマ、映画の中から、皆で気に入った歌(日本語で歌唱)や役を選び、リハーサルを重ねていきます。その過程で、邦楽独特のイントネーションに苦戦したり、自分の歌いたい曲の取り合いになって揉めたり、踊りの振り付けでお客さんへの受けを想像して笑いが止まらなかったり、どんどんお互いが仲良くなっていきました。祭りの本番より、準備の時のほうが楽しいとは言いますが、まさにそんな感じでした。
ただ、本番が始まると、予想をはるかに上回る数の人が訪れ、立ち見席をつくって何とか収拾をつけれるような状態でした。子供グループ、中高・学生選抜、大人組と3チームに分かれて練習してきた成果を出し合います。
はじめに登場したのは子供グループですが、最年少の女の子(8歳)が緊張のあまり顔が泣く寸前になっているように見えました。それでも、最初の<涙くんさよなら>をみんなで合唱しきると元気が出て、次に大好きなトトロの曲が流れると、“となりの”子達と一緒に“トトロ”のように口を大きく開け精一杯声を出して歌い、拍手大喝采をもらいました。出演者の中で唯一演歌に挑戦した(現地の人達にとってこのジャンルは本当に不慣れで難しいようです)10歳の男の子は歌詞も暗記して唄いきり、皆を驚かせてくれました。
次にステージへ上がったティーンエイジャー・チームの多種多様な演目は、場の雰囲気を最高潮に盛り上げました。気分が暖かく楽しくなる<春一番>を振り付け通りに合唱し、感情を込めて<ありがとう>を歌い聴衆の心を掴みます。
そして、現地でも大人気のアニメ<推しの子>の主人公に扮するコスプレで、この作品のオープニング主題歌で世界中に大ヒットしている曲<アイドル>をバックにパワフルでスピード感溢れるダンス・パフォーマンスを披露、さらにそのラップ調で相当な速度で歌わなければならない<アイドル>をカラオケで完璧に熱唱するなどサービス満点の内容でした。
締めに登場した大人の出演者達。<君をのせて>や<I LOVE YOU>などの心に響く曲を情緒的に、そして語りかけるように美しく歌い上げ、大きな感動を与えてくれました。
ギターの生演奏にのせての<いつも何度でも>では、聴いている人達も一緒に歌えるところもあり、場内が一体となりました。
最後に<蛍の光>を出演者・来場者みんなで歌い、このホットなイベントは幕を閉じました。主催してくれた代表者がかけてくれた「一緒に食事をしたり、歌ったりして寒い冬を温かくする伝統がここに生きている!」という言葉と、訪れた方から次々に帰り際受けとった「ありがとう!」という感謝が忘れられない素晴らしい催しとなりました。
フェスティバル終了後、参加者同士で手づくりの寿司やスイーツを持ち寄ってのちょっとした忘年会もありました。遠くから応援に駆けつけてくれた日本語を専門に学ぶ大学生達と、メイクをとって着替え直し普段の高校生・学生の姿に戻ったコスプレイヤー、出番を終えてすっかりリラックスした様子の出演者のみんなとの間で自然と会話が弾み、アンコールで一緒になって歌い踊り出します。自分が日本語を教えている大学生と生徒達がひとつの文化の祭典を通して知り合い、友達の輪が広がっていくのには感慨無量です。これも胸いっぱいの最高に嬉しいハイライトです。