2022年1月

 こんにちは、2022年のお正月を迎えたベラルーシからのレポートです。この冬は、気温がマイナス10度に達する日があるかと思えば、翌日はプラスの温度になり辺り一面に積もった雪がいっきにとけていくこともあります。コロナ禍で新年を祝う様子を、バレンチーナさん、アンナさん母娘のフィルモーノヴァ家の取材協力とともにお伝えします。以前インタビューに応じてくれたお二人ですが (チェルノブイリ通信No.120号掲載)、今回はお住まいのチェルヴェニ市からオンラインで出演してくれました。

冬のチェルヴェニ市

 現在4人暮らしのフィルモーノヴァ家のメンバーは次の通りです。車のエンジニアとして働く父フョードルさん(55)とスクールカウンセラーの母バレンチーナさん(47)はともにモギリョフ州クリマヴィチ市の出身です。兄パーヴェル君(21)と妹アンナさん(19)は自宅から約65㎞離れたミンスクの大学に通っています。パーヴェル君は情報系の大学4年生(最終学年)。アンナさんは教育大学の3年生で、家族の中で彼女だけが放射能による健康被害を受けています(チェルノブイリ原発事故身体障害者手帳の所有者でもあります)。一家は2007年にモギリョフ州のチェリコフスキー地区からミンスク州のチェルヴェニ市に引っ越してきて、現在に至っています。

フィルモーノヴァ家の皆さん
左からパーヴェル君、フョードルさん、バレンチーナさん、アンナさん

 2021年12月18日(土)、福岡での勉強会に出席した獨協医科大学准教授・木村真三先生とCMNメンバーの皆さんがズームでバレンチーナさん、アンナさんと会談しました。

 最初に、バレンチーナさんは自分の娘アンナさんがコロナ禍で大変な思いをした体験を語りました。「私たち親子もチェルノブイリ原発事故の被害者で、放射能汚染により生まれつき免疫の弱いアンナはコロナの影響でこの秋に重病にかかりました。家族全員が最初に感染した昨年は(2020年9月末)、21日間の自宅隔離を経てすぐに回復しましたが、今回は急激に食欲が落ちて痩せ細っていく危険な状況が3ヶ月もの間続きました。最近ようやく食べられるようになり、大学に通えるようになったところです。このウイルスの恐ろしさと、徹底した感染予防対策の大切さをあらためて感じさせられました」。

アンナさん
自身が通う教育大学前にて
アンナさんとバレンチーナさん

 現在ベラルーシにおける1日の新規感染者は約1500人です(12月末、保健省発表)。2ヶ月ほど前から公共交通機関、食料品店、デパート等でのマスク着用義務が解除されていますが、車内や建物の中では半分近くの人がマスク姿です。飲食店の営業時間、多数の人が集まるイベント開催はほぼ通常どおりですが、各箇所に消毒液が設置され、マスク装着を推奨する提示が見られます。従来の生活を楽しみながらのリスク管理は、個々人がしなければいけません。

  カウンセラーとしてチェルヴェニ市の学校で働くバレンチーナさんは、福島原発の事故直後から現場で放射能汚染の研究報告を行いながら被害者の心のケアもする木村先生の話を真剣に聞き入り、自身が知るチェルノブイリの経験と重ね合わせていました。

 続いて、インターンとしてCMNをサポートしている荒木さん、内田さん、田中さんとアンナさんによる大学生同士の会談が行われました。大学ではベラルーシ語・中国語を専攻するアンナさんですが、もともとは日本のことが大好きで一番行ってみたい国だと言います。「日本の色鮮やかなファッション・コスメティックや美味しい料理・豊富な種類のお菓子など、 気分が明るくなる華やかな文化にずっと憧れてきました」。日本の学生生活にも興味津々で、「私の所属する専攻科グループでは毎日たくさんの課題を出されます。私は自宅のあるチェルヴェニから片道1時間 (マイクロバスと地下鉄)かけて大学まで通っているので 、夕方に家へ帰ってレポートを作成していると1日があっという間に終わってしまいます。皆さんが通う日本の大学でも同じように多くの課題が出ますか?講義の後、遊ぶ時間はありますか?友達同士でどんな所へ行きますか?日本に来た時はディズニーランドを訪れてみたいと思っていますが、他にお勧めの名所はありますか?どんな音楽グループが人気ですか?…」と人懐っこい笑顔で次々と質問をします。木村先生にも「私は海外でロシア語や英語を教える先生になりたいと思っています。メイクアップやスタイリストにも興味があります。外国人が日本で仕事を見つけるのは難しいですか?」と積極的にきいてきます。「どの分野で働くにしても、まずは日本語を身につけることが大事です。会話ができて、ある程度漢字を含めて読む力があると有利になります。」とアドバイスをもらうと、嬉しそうにうなずきながら感謝していました。

バレンチーナさん、アンナさんと木村先生、CMNメンバーの皆さんとのオンライン交流は話がはずみ、休憩を挟んで2時間近くに及びました。お別れの挨拶を覚えたばかりのロシア語と日本語で言い合うなど、すっかり仲良くなった同世代のアンナさんと荒木さん、内田さん、田中さんにとっては、お互いの文化を知る上で有意義な時間となりました。 

 アンナさんは今も毎晩就寝前にホルモン剤を飲んでいて、年に一回は大きな病院での検査も必要となります。免疫が弱いためインフルエンザなどの感染症にもかかりやすい体質ですが、本人はいたって前向きな性格の持ち主で、常に明るい色の服を着こなし、綺麗な花を育てるのが好きで、オートミールやパンケーキ、そして寿司など様々な料理にも挑戦します。どんな時もポジティブさを忘れないアンナさんはとても健康的に見えます。

アンナさん手作りのお寿司
(当時12歳)
アンナさんの得意料理 オートミール

 オンライン会談の感想を楽しそうに話し合うバレンチーナさんとアンナさん。今回知り合った日本の方々をぜひ家に招待して家庭料理をふるまい、交流を続けたいということです。彼女達は新年を迎える準備中で、ズーム出演で使った広間にはクリスマスツリーが飾られ、部屋の窓枠にはイルミネーションが取り付けてありました。

 ベラルーシでは1月1日の正月を挟んでカトリック(12月25日)とロシア正教(1月7日)のふたつのクリスマスを祝います。 国民の多くが正教徒なので、1月7日は家族連れで教会に出かける習慣があります。12月25日はカップルや友人同士で大型ショッピングモールやカフェ・レストランに出かけ、買い物や食事を楽しみます。伝統的な新年の行事(正月と正教クリスマス)の前に、わりと自由なかたちで過ごせる祝日で、若者の間で人気です。   

町のショッピングモール

 2022年、新しい年を迎えるにあたって、バレンチーナさん達フィルモーノヴァ家の招待を受けました。「正月の迎え方は、その一年の過ごし方を示します。新年を一 人で迎えると、その年が孤独になってしまう… 。私達の家で一緒に祝いましょう! 」と、家族の大切な行事にもかかわらず、温かいおもてなしをしてくれました。

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