こんにちは、春になり暖かくなってきたミンスクからのレポートです。今回のテーマはベラルーシの郷土料理です。主食はパンとお粥、そしてジャガイモです。料理はそのジャガイモと麦、卵、様々な乳製品を使ってできるものが多数あります。レストランの定番メニューにもなっていて、家庭でもよく作られるスープ、メインディッシュ、デザートの代表的なものをそれぞれ紹介したいと思います。
①スープは様々な種類があります。有名な “ボルシチ” (ビーツ入りで紅色)、“ソリャンカ・ミャスナーヤ”(香辛料をきかせて肉類を汁物仕立て)、“テルチュハ”(ジャガイモとバター、クリームを混ぜてベーコンを添える)の他にキノコやジャガイモ入りの野菜スープ、カボチャ、ブロッコリー、マッシュルームをすりつぶしたクリームスープが好まれています。また、夏の暑い時期にはボルシチの冷製スープ版“ハラドニック”が人気です。
春先にサウナへ招待された時にご馳走になった魚入りスープ“ウハー”は調理法、味ともに印象深いものでした。スーパーの買い出しからご一緒させてもらいましたが、ジャガイモ、ニンジン、トマト、青菜、香辛料と材料を選んでいき、さらに魚売り場で水槽の中で泳いでいる鯉(現地の川でとれる活きのいいもの)をビニール袋に入れてもらいます 。魚は新鮮なものほど味がよいということですが、とても勢いよく跳ねていたのでレジに通すのも大変そうでした。サウナ室のある木造の家にある古風な調理場でスープの素を作ります。かまどに薪を入れて火をおこし、大きな釜に入れた水を沸騰させます。その間、魚をさばき野菜を適当なサイズに切り分けるなどして具の準備をします。沸騰したお湯のなかへ具はかためのものから順に入れていき、何種類かの香辛料を加え、アクを取り除きながらゆっくりとかき混ぜます。実に一時間ほどかけてゆで上げていきます。そして、かまどにくべていた薪を一本取り出し、それを煮立ったスープの中に浸して仕上げとなります。そうすることで旨みがさらに増す伝統の隠し味だとか。こうして出来上がった“ウハー”は確かにコクのある美味しいスープです。スパイスがよくきいた汁に野菜と魚のだしがバランスよく出ていて、口に含んで飲むととても体が温もっていくのを感じます。
それと一緒に黒パン、“サーロ”(肉の脂身)、酢漬けの野菜類が食卓に並んでいました。飲み物はミネラルウォーター(炭酸ガス入り/なし)、ライ麦と麦芽を発酵させて作られる“クヴァス”のボトルが置いてあり、はちみつ入りの紅茶も注がれます。これがサウナでの伝統的メニューということす。
②メインデッシュは主食であるジャガイモを使用したものが豊富です。ジャガイモの味そのものがとても美味しく、調理の仕方もいろいろです。普通に揚げたり蒸したりして肉や魚に添えることもあれば、ゆでたものを押しつぶしてペースト状に練ったマッシュポテト“ピュレー”のようなものまで幅広くあります。
なかでも有名な一品が“ドラニキ”です。細かくすりおろしたジャガイモを油で揚げたハッシュドポテトのようなもので、これにサワークリームをつけて食べたり、肉や魚、リンゴ、フレッシュチーズをはさんだものが出されます。現地でいの一番に勧められる民族料理で、来た当初はそのジューシーな味に夢中になりました。満腹感を得られますが、続けているとあぶらっこさに飽きがでるかもしれません。しばらく口にしていなかった“ドラニキ”が懐かしくなり、カフェで注文してみました。久しぶりに食べてみると、初めて口にした時のような新鮮な香りと旨み豊かな味わいを十分に楽しめました。
③デザートに出されるものはバラエティに富んでいます。一般家庭で手軽に作れるものを教えてもらいました。パンケーキ類の“シルニキ”や“オラージ”は調理法と出来上がりの形が非常に似通っています。前者は“トヴォログ”という白くて未熟成な柔らかいチーズ、後者は発酵した乳飲料の“ケフィール”と“ソーダ”(調理用炭酸水素ナトリウム)をそれぞれ小麦粉、生卵、砂糖、塩と一緒にかき混ぜてパン生地を作り、平たく整形してフライパンで揚げます。地産のサワークリーム“スメタナ”や加糖練乳“スグションカ”を塗って食べるとおいしさが際立ちます。
食料品店でよく見かける菓子パンの“スメタンニク”(サワークリームをのせて焼成したピローク)も家で作ることができます。温めた牛乳をボウルに注ぎ、パン生地を作るためのイースト(酵母)と砂糖、小麦粉を入れてよく混ぜて置いておきます。これに別のボウルで生卵とバターに塩をまぶしてかき混ぜたものを加えて、さらにペースト状にしていきます。かたまってきた生地をこねて形づくり 、そこへサワークリームに砂糖やバターを加えて濃厚にした“スメタナ” ソースを盛り合わせ、オーブンに入れて焼き上がるのを待ちます。食後やおやつの時間に出される紅茶やコーヒー、ココアの温かい飲み物に添える菓子パンの一つとして安定した人気を誇っています。
その他にもクレープの一種“ナリスニキ”(薄力粉、砂糖、塩、生卵、牛乳、水を混ぜ合わせものをフライパンで揚げた“ブリヌイ”の生地にサワークリーム、フレッシュチーズ、ジャム、ベリー、レーズン、キノコ、イクラなどをお好みで包んで食べるおやつ)やアップルパイの“シャルロット”ケーキ(小麦粉、砂糖、生卵をかき混ぜて作ったペーストの中にリンゴの切れ端を入れていき、オーブンで焼いたピローク)等が家庭で作られるスイーツとして有名です。
紹介した民族料理以外にも、様々な野菜・肉・魚を盛り込んだサラダが食卓を彩ります。親戚や友人同士の集まりでは、これに加えてピザや寿司を注文・調理することが多々あります。手作りの寿司は市販の海苔に炊いたご飯とサケやマスといった魚の赤身、薄焼き玉子、キュウリまたは野菜の葉、柔らかめの白チーズをアレンジにのせて巻き簾でくるんでいくものが好まれています。冬が長く寒い国なので、体が芯から温もるようなコクのある料理が主流ですが、新鮮な野菜やフルーツ、豊富な乳製品もバランスよく摂取するなど、食と健康に対する関心は高いものがあります 。