近年、スポーツイベントが数多く行われているミンスクからのレポートです。サッカーやホッケーといったヨーロッパでも人気の競技が盛んなベラルーシですが、日本のスポーツ文化でもある野球がこの国でも広がりつつあります。
毎年、チェルノブイリの起きた4月26日前後に《Minsk cup》という4チーム対抗の野球トーナメントが行われています。今年も大通りプロスペクト・ポベジテレイ沿いにある野球場で4月24日~27日の間、1993年発足のクラブ《ミンスク》(主催者)、ロシア代表、ウクライナのクラブチーム《BIOTEXCOM》、ラトビア混成チームが優勝トロフィーをかけて総当たりトーナメント戦を行いました。試合前日に、ベラルーシ野球協会代表も務める《ミンスク》チーム監督のアレクサンドル・セチコ氏が野球への思いを語ってくれました。「体験したその日から野球のことが好きになりました。最初はこのスポーツを自国で根付かせるのに苦労しましたが、現在では私のチームも半ばプロとして様々な国際大会に出場するようになりました。ベラルーシ代表も欧州ランク23位ですが、7月にスロヴァキアで行われる東京オリンピック出場をかけた一次予選大会に出場します。そこを突破したとしても、8月に二次予選、9月の最終予選を勝ち抜かなければ日本には行けませんが全力を尽くします。野球発祥の地アメリカとは微力ながら交流を深めていっています。ドミニカ共和国出身でメジャーリーガーのアルバート・プホルス選手の奥様はベラルーシを訪れたことがあります。彼女が言ってくれたように、ベラルーシで野球を発展させる夢を具体化することが大事だと思います。もちろん、日本の野球団体との交流も望んでいます。明日から行われるようなトーナメントに日本からのチームも招待したいですね。日本の野球場に行って試合を観戦するとともに、あの楽しい応援もぜひ体験してみたいです。できれば桜が満開の時期に訪れて、お酒を味わってみたいです!」。
翌日から始まったトーナメントでは、隣国同士のチーム戦ながら国際色豊かな大会となりました。優勝したロシア代表にはキューバやドミニカ出身の選手が揃っており、質の高いパフォーマンスを披露しました。ラトビアのチームの中にいた女性プレーヤーもバッターボックスに立ちました。最も緊張感があって面白かった試合は、大会二日目に決勝進出をかけて行われた実力拮抗のクラブ同士《ミンスク》-《BIOTEXCOM》の対戦でした。7回表まで《ミンスク》が逆転ホームランなどで4-2とリードをしていましたが、その裏の守りで2アウト二塁三塁ツーストライクから逆転スリーランを打たれてしまいました。たった一球でムードが変わり、勝負が決まりました。日本のプロ野球で見てきた野球の醍醐味を、ミンスクでも感じた瞬間でした。選手や観戦に訪れたファン達の喜怒哀楽の表情を目の当たりにすると、本当に野球がこの国で発展する希望が湧いてきます。日本のチームがベラルーシを訪れて野球文化を伝えると同時に、この国の魅力にも触れてくれたらどんなに素晴らしいことでしょう!大会終了後、こんな夢をアレクサンドルさんと語り合いながら球場をあとにしました。
(田中 仁)