津島地区の現状

津島原発訴訟を支える会 共同代表
吉川 一男

 福島県浪江町津島地区は、太平洋沿岸部の浪江町中心部から約30km北西部に位置する自然豊かな山間部の集落です(世帯数400・人口約1400人)。

東京電力福島第一原子力発電所爆発事故当日、浪江町中心部(原発事故現場から約4~5km)から8千人~1万人の町民が津島地区に避難してきました。津島地区は、長年育まれてきた結いの精神の強い地域「地域そのものが一つの家族のようなところ(裁判での女性の証言)」です。津島住民は、長年の助け合いの精神・風土から、多くの避難者の宿泊や食事の世話など昼夜を問わず献身的な支援活動に当たりました。

避難所として使用された集会所

 しかし、津島地区は最も高い放射能汚染地域でした。ところが、高線量地区であることについては国などから一切連絡がなく数日間放置されました。そのため、全ての津島住民と避難者たちは高濃度の放射線によって被ばくしました。放射線量測定に入った放射線衛生学者の木村真三獨協医科大学准教授がその事実を住民に知らせる場面がNHKテレビ「ネットワークでつなぐ放射能汚染地図」でも放映されました。

 国からの避難命令が出される前に当時の町長の判断で津島住民や避難町民が避難しました。津島地区は現在も帰還困難区域で住民は一人も帰還しておりません。福島県浪江町津島地区は現在も住宅入り口がバリケードで封鎖され、許可なく自宅に入ることはできません。

バリケード
浪江町へと続く道路

 津島地区でも2年前「特定復興再生拠点区域」と称して、アリバイ的に津島全域のわずか1.6%の住宅地の除染が行われました。しかし、残りの98.4%の除染計画がありません。しかも、除染した区域は現在雑草に覆われ惨憺たる状態です。田畑は10m以上の森林と化し、住宅地は雑木と雑草に覆われ、住宅内はイノシシやアライグマ、サルなどの棲み処となり足の踏み場もありません。
 原発爆発事故から10年7ヶ月が過ぎましたが、除染は特定復興再生拠点区域と地域を通る道路の両脇20mしか除染が行われていません。除染が行われない山林に囲まれた「自然豊かだったふるさと津島」は、今も放射能高線量が続いており帰還の見通しは全く立っていません。

2019年3月
2021年3月
2021年10月

 「地域丸ごと切り捨て葬り去る」国による棄民策によって津島地区は地図上の地名は残っても荒れ果てた森林地帯になりかねません。「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」は、国と東電に立ち向かう原点的な最先端のたたかいです。この国策による津島切り捨てを容認することになれば、原発再稼働・推進策を許すことになり、地震国日本国内で再び過酷な原発事故の危険を招くことになりかねません。

 津島の現状は単に津島住民だけの問題だけではなく、国民全体に課せられた課題ではないでしょうか。

無人のまま朽ち果てていく住宅
至る所が草木に覆われている

*「特定復興再生拠点区域」とは、将来にわたって居住を制限されてきた帰還困難区域内に、避難指示を解除して居住を可能にするとした区域のことです。各市町村が復興及び再生を推進するとして(「特定復興再生拠点区域復興再生計画」)を作成し、内閣総理大臣の認定を受け、区域内の帰還環境整備に向けた除染・インフラ整備等を行っています。
 しかし、いくつかの「特定復興再生拠点区域」が指定されましたが、その区域は元の区域全体のごく一部で、帰還した人の多くは「ふるさとに帰りたい」との思いの強い高齢者で、多くの若者夫婦や子供たちは帰還していません。