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チェルノブイリ通信 No.53 (1)
2002年6月20日発行
・移動検診総括会議報告
一枚の写真から〜エレナのおばあちゃん
活動を支える陰の立て役者たち
走れ雪だるま号〜JCF神谷さだ子さんの報告
ベラルーシからの手紙 第3話
津島朋憲つれづれ日記
・ 出版物案内
・ 2001年活動報告&2002年活動予定
・ 募金ありがとうございます

5年間を振り返って〜移動検診総括会議

2002年4月7日(日)、広島留学生会館にて、5年間の検診を振り返り、今後どのように展開していくかを話し合う総括会議を行いました。その内容の一部をお伝えします。

出 席 者

武市宣雄医師(広島甲状腺クリニック院長)
横路謙次郎医師(広島大学名誉教授)
片桐誠医師(永寿総合病院)
角みどり検査技師(高木病院)
佐々木栄司検査技師(伊藤病院)
三本検査技師(広島甲状腺クリニック)
川崎ご夫妻(ヒロシマセミパラチンスクプロジェクト)
山田英雄(医療コーディネーター、通訳)
矢野宏和(チェルノブイリ支援運動・九州 代表)
河上雅夫(チェルノブイリ支援運動・九州 運営委員)
寺嶋悠 (チェルノブイリ支援運動・九州 運営委員)
谷口恵 (チェルノブイリ支援運動・九州 事務局、運営委員)

人のつながりと信頼関係によって成り立つ活動
 悲惨な事故をきっかけに、人と人との出会いが生まれました。事故がなければなかったであろう、皮肉な出会い。しかし、だからこそ互いに感謝しあい、支えあい、学び合いながら関係が深められ、つながりは枝のように広がってゆく。

矢野代表
5年間で9回の検診を行い、回を追う毎にスムーズにできるようになった。その間に人とのつながりができ、人材も育ち、シンポジウムを行ったり、雪だるま号による患者さんの移送をするなど市民との関わりもできてきた。信頼関係が基礎になっている。
武市先生
検診でガンが多く見つかるのは、アルツール医師が事前に疑いのある人達を集めてくれているからである。
角検査技師
少しずつ技術を伝えることができており、今は新しい人達が活躍しているので安心できる。
山田さん
検診のお世話をしてくれたエカテリーナ・カプスティーナさんのご冥福をお祈りする。今後も人とのつながりを大切にしていきたい。

医療検診活動の難しさ
 「突然の事故」によって引き起こされた病。同じ放射線の影響であっても、広島や長崎のそれとは現れ方が違う。かといって特別な病気ではなく、誰にでも起こりうる病気。その診断は、長年経験を積んだ医師達にさえ、16年経った今でも、16年経った今だからこそ、困難なものである。

武市先生
どれがチェルノブイリ事故の放射線の影響による病気で、どれがそうでないのかを判断するのは極めて難しい。診る先生、用いる機材によっても判断はまったく異なってくる。 片桐先生
効率よく病気を発見する必要がある。はっきり「ガンだ」と分からない人を切ることはできない。佐々木検査技師−手術しなくていい人には「しなくていい」というガイドラインを明確にすること、それを現地に根付かせることが重要。
武市先生
ベラルーシでは、アカデミックなことをやっている人、そうでない人、専門などによってはっきりわかれていて、他の分野には手を出そうとしないため、わたしたちの診断を受け入れないこともある。例えば、違う手法で染色したものを交換しあって検討するなどしたらよい。
現地で検査が正確に行われているかどうか結果を確認したり、跡が残らない手術法など伝えてゆきたい。

ベラルーシという国をとりまく環境・わたしたちの責任
 日本の常識はベラルーシでは通用しない。旧ロシアであるベラルーシには、わたしたちとは違う歴史の名残が人々の生活に深く染み込んでいる。わたしたちは、常にその違いを頭に置いて活動しなければならない。それは同時に、違う環境の中にいる同じ人間同士だと言うことを認識することでもある。

横路先生
ベラルーシはまだ共産主義から脱していない。NGOプラスαのことができないだろうか?政府やメディアなどは、時期が過ぎるとすぐに他の話題へと移ってしまっている。
山田さん
今は政情が厳しく、共産主義に戻りつつある。そういう点を考慮しなければならず、市民運動には責任がある。やりっぱなしにしてしまうと病院側が身構えてしまう。
片桐先生
医療行為についてしっかり役所などの承諾をとるべき。
山田さん
新たに保険局の協力も確認しており、その点は心配ない。

今後へむけて
 これからも、ベラルーシと日本の間の違い、境界線をどう乗り越えていくかが課題である。今後、検診の拠点をストーリンからブレストへと移すことが決まっている。甲状腺ガンの早期発見に加えて、現地の人材育成にもさらに重点を置いて支援を継続することになる。

山田さん
ブレストに検診の拠点を移すに当たって、なぜブレストなのか?それは、主な汚染地域はゴメリやモギリョフとされており、ブレストにも影響があるが、手が回っていないため。
保険局、第一・第十病院、内分泌診療所と協力してやっていく。ブレスト州は150万、市は35万の人口。
前回十月に調査で行った際には顕微鏡を購入し、アルツール医師からの連絡で活用しているとのこと。必要な機器やスライドグラスなどの消耗品をコンスタントにバックアップすることや人材育成が必要。以前は、ミンスクに全員集めて基幹病院で手術をすることになっていたが、現在は地方でも出来る。しかし現実には、それを出来る専門家がいないし、器具がない。
ストーリンのフォローについては、車を用いてブレストへ連れてくるように対処する。外科手術の必要な人はミンスクへ連れてゆく。

その他確認事項
これまでの検診結果(日本にあるもの、ベラルーシにあるもの)を改めて確認。
これまで診た患者さんをしっかりフォローする。
学校での検診活動、リクビダートル(事故後の処理にあたった労働者)やその家族の調査など、新しい支援の可能性も丁寧に調査していく。
日本・ベラルーシ両方で今後多くの人に役立てられるような、5年間の検診報告書を作成する。
他の支援団体とも共有できるところを共有しあい補い合ってより有効な支援を目指す。

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