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チェルノブイリ通信 No.54 (3)
2002年9月18日発行
・第1回ブレスト市移動検診報告
リクビダートルについて考える
ベラルーシからの手紙(最終回)
「アレクセイと泉」映画上映のお知らせと学習会の様子
のぞみ作品入荷のお知らせ・支援コーヒーとマトリョーシカセット
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チェルノブイリ後を生きる子どもたち
〜ベラルーシからの手紙〜

最終回  力丸 邦子

●神様のいたずら? ナイスシュート!●

9月の始めに、嬉しい手紙が届きました。「検診に行ってきました。今のところ調子いいです。クニコ!ボクは、国立の工業大学に合格しました。とても嬉しい。けれど、これから先の勉強の難しさを思うと、ちょっと心配です」イワンからです。イワンはサッカーが好きな少年で、初めて会った夏は、また子どもそのものでした。数人の男の子がサッカーで遊んでいる中に、私はいきなり入りこんでボールを蹴ったのです。なんと、そのひと蹴りが、みごとゴールに入ったのです。子どもたちは、“おおっ!”と歓声を上げ、それから仲間と思ってくれて、夕方になると宿舎の前で待っていて、ボールをかざして“遊ぼう”と示します。運動が苦手な私が、しかもたった一度蹴ったボールがゴールに入るなんて、これは神様のいたずらだったとしか思えません。イワンは家の手伝いをよくする子どもで、その様子も手紙で時々知らせてくれました。ママが心臓病で2週間入院した時も、父を手伝ってよく働いたようです。イワンはテレビを観るのが好きで、特にサッカーの試合には夢中になっているようです。日本への関心も高く、テレビニュースにも注意を向けていて、「大雨の被害を知ったが、あなたは大丈夫か?」、「台風で家が壊れたとテレビで観たが、あなたのところでは?と心配している。知らせてください」と、即、心配しての便りが届きます。ベラルーシの子どもたちを心配しているつもりの私が、こうして子どもたちに心配してもらっているのです。

●縁が縁を呼んで●

ユーラからの手紙も、もう12通になりました。が、いつもママからです。「ユーラの手紙だと、あなたはわからないでしょうから」と書かれた最初の手紙に、「私たちは、日本にもうひとつの家族があります」と里親の住所が書かれてありました。北陸に住むKさんです。そこで私は、「Kさんにユーラのサナトリウムでのスナップ写真を送りました。Kさんは、たいへん喜んでくれました。ユーラの家は集団農場にあるようで、暮らしの大変さをママはいつも書いてきます。「田舎暮らしは、苦労ばかりだ」と。Kさんにユーラの写真を送りました、と知らせてからは、いつもKさんによろしくと添えられてあり、その都度、私もKさんに伝えています。そんなご縁で、Kさんとも親しくなりました。つい先日、私は思いついて、「Kさんの写真を私に送ってください。ユーラに送ります。きっとユーラの家族は喜ぶでしょう」と話してみました。「こんな写真でいいのかしら」と、Kさんは家族のスナップ写真を快く送ってくれました。今頃、Kさんの写真が届いて、ユーラのママは大騒ぎをしているかもしれません。

手紙の豊かさについて
〜チェルノブイリ後を生きる子どもたち、最終回に寄せて〜

(チェルノブイリ支援運動・九州 矢野宏和)

4回の連載でお伝えしてきた力丸邦子さんのエッセイも今回で最終回をを迎える。改めて、これまでの作品を読み返してみた。電話、FAX、そしてインターネット。ベラルーシとの関わりにおいても、多くの情報を、迅速に細やかに、伝え知ることができることになり、把握できる状況も膨張していく。
それは、紛れもなく、「便利」なことである。夜、1ヶ月後の検診のスケジュールを記したメールを送り、翌朝、「確認」の返事が返ってきたとき、「何てすばらしいのだろう」と感嘆したものだった。
だが、そのとき、気付くまでに多少の時間は費やさなければならなかったが、確実に失うものもあったのだ。車の免許をとれば、ほんの10分そこらの本屋にいくのにも、車を頼ってしまい、ささやかな散策の時間を失ってしまうように、私は、手紙というものと、そこから醸し出される「想う時間」というもの失った。
  独学でロシア語を学び、辞書を引きつつ書き、そして読み、紡がれ広がる世界。力丸さんの作品を読んで、その掌に、すっぽり収まり、温められる物語に、ことさらに心惹かれるのも、便利さの影で失ったものへの憧れがあるからだと想う。

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