チェルノブイリを伝える中学生からの報告
知ったことは本当につらいものばかりで私の心に重く響きました
2004年2月25日から27日にかけて、愛知県江南市立北部中学校でパネル展が開催されました。主催者は同校3年生(現在、高校生)の岩井舞さんです。チェルノブイリ原発事故当時はまだ生まれてもいなかった世代で、チェルノブイリをテーマにしたパネル展が実施されることに、チェルノブイリ支援運動・九州の事務局、吉本美貴も驚きと嬉しさを感じたと言います。
『チェルノブイリ』という言葉さえ聞いたこともなかった舞さんは、このパネル展を通してどんなことを学んだのでしょうか。そして、このパネル展を通して同級生たちが抱いた思いは…。舞さんと事務局の吉本の間で交わされた手紙を通して、彼女たちが感じたことをお伝えします。
岩井舞さんからのお便り――
チェルノブイリ支援運動・九州 吉本 美貴 様
拝啓
春まだ浅いこのごろ、みなさまいかがお過ごしですか。わたしたちは中学校を卒業ということで期待と不安であふれていながらも元気に毎日をおくっております。
さて、先日はいきなりのメールでのお願いにもかかわらず、パネル展を行うためのパネルを貸していただきありがとうございました。おかげ様で無事パネル展を終わらせることができました。
私は総合的な学習で「チェルノブイリ」について調べていき多くのことを知りました。それらで知ったことは本当につらいものばかりで私の心に重く響きました。しかし、私達の年代の人々は「チェルノブイリ」という名さえ知らぬ人がほとんどです。それは仕方のないことかもしれませんが、とても悲しいことだと思いました。それで今回少しでも知ってもらおうと取り組んだわけですが、簡単なプレゼンテーション、そしてパネル展をとおして学校中の人が「チェルノブイリ」に関心をもってくれ、協力してくれました。このことを大変うれしく思っております。言葉だけじゃ伝えられないものをパネル展という方法で視覚からも伝えることができ、本当によかったです。私が特に目をひいたものは子供達が描いた絵でした。どの絵からも恐怖や悲しみのようなものが感じられ、見てて涙が流れそうになりました。きっと、見に来てくださった多くの人々が何らかを感じていかれたと思います。「すごかった」、「チェルノブイリのことを知れてよかった」、「何か力になりたいと思った」などの感想が口々に聞かれました。私も微力ながらこれからも力になっていけたらと思っております。
今回、パネルを貸していただき本当にありがとうございました。
では、みなさまのご健康と、いっそうのご活躍をお祈りし、つたない文面ではございますがお礼状とさせていただきます。 敬具
岩井 舞
岩井舞さん
写真展のご成功おめでとうございます。
パネル展を企画し実行するという作業だけでもとても大変なのに、その内容が自分が生まれる前の昔の出来事で、切り口はどこから入ろうか、どうしたら同世代の人々に伝わるかなど、きっとたくさんの戸惑いや苦労があったことと思います。本当にお疲れさまでした。
チェルノブイリ支援運動・九州事務局員として、募金やチラシ配りなどで街頭に立つことが多いこの頃、「チェルノブイリってなに?」「さあー。」「なんか、あやしいんじゃない?」と、足早に私たちの前を通り過ぎていく人の多さに、ちょっと弱気なったりもします。
そんな中、舞さんのように『チェルノブイリ』を知らない世代が、自ら企画してくださったこの写真展はとても意味のあることだと思いました。その取り組む姿がとても心強く感じました。
かく言う私も実は、事故当時の記憶はほとんどなく、かろうじて『チェルノブイリ』という言葉だけ、なんとなく怖いイメージで知っているという世代です。
チェルノブイリに関わるようになって、私は多くのことを知ることができましたが、舞さんのお手紙を読み、こちらのメッセージや想いが伝わらないことに弱気になるのではなく、チェルノブイリを知らない人たちと同じ視点に戻り、伝え方をもっと模索する努力をしなければ、ということに気づかされました。
舞さん、ありがとうございました。高校生活も、きっと素敵なものになりますようお祈りしています。
チェルノブイリ支援運動・九州
吉本 美貴
追伸
今回のパネル展と同時に集めてくださった募金、5万3千円をいただきました。募金は、チェルノブイリ事故被災者への医療支援活動に充てられます。本当にありがとうございました。
パネル展をご希望の方は…
*チェルノブイリ支援運動・九州ではいつでも写真や絵のパネルの貸し出しをしています。イベントなどでパネル展をご希望の方は事務局まで、どうぞお気軽にご連絡ください。
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