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チェルノブイリ通信 No.61 (4)
2004年9月24日発行
ベラルーシ旅日記
チェルノブイリ調査隊報告
ベラルーシの旅・チェルノブイリ調査隊報告
・雪だるま2号関連報告
チェルノブイリと関わる人々
手島雅弘チェルノブイリ写真展を訪ねて
「雪だるま2号」関連報告
道遠く、雪だるま2号、未だ走れず
文/矢野宏和 (チェルノブイリ支援運動・九州)

 旅が終わり、飛行機がミンスク空港からふわりと浮かびと、平坦な緑の地平の果てへと伸びる細い道を、蟻のごとき小さな車が這い進んでいくのが見えた。
 自然と想いは購入が叶わなかった「雪だるま2号」の方へと向い、無念の気持ちが込み上げてくる。この旅のなかで、幾度私は溜息をもらしただろう。 その数だけ、歳をとってしまったような気がする。
 今回の調査にける一番の驚きは、購入費用の300万円がフォルクスワーゲンの車に姿を変えるまでには、来年までかかるということだった。その理由は、 300万円の車を購入するのに、140万円の税金が課せられることに起因する。つまり、チェルノブイリ支援運動・九州は、雪だるま号の購入費用300万円に加えて、 140万円を用意しなければならないのである。
 チェルノブイリ支援運動・九州の方にそんな資金的な余裕はないし、仮にあったとしても、会員の皆様からお寄せいただいた貴重なカンパを、 ベラルーシという国家に支払う税金にあてることについて、運営委員や会員の合意は得られないであろう。
 ベラルーシ赤十字に寄贈され、検診チームの、あるいは現地の患者の移動手段として利用される雪だるま号にまでも課せられる140万円の税金・・・。 それがどうしても腑に落ちず、また漏れる溜息。
 これから購入しようとしているのは、6年間、現地で活躍してきた雪だるま号の後を受け継ぐ車なのだ。そうした実績も評価して、140万円の税金を免除してくれてもいいではないか。
 ベラルーシに赴く前、そんな想いをまずベラルーシの日本大使館に伝えて、何とか税の免除の協力を仰いだが、返答は、「ベラルーシの国の問題であり、 日本側としてできることは何もない」という予想通りの、そして当たり前の返答しか得られなかった。
 一方、日本にあるベラルーシの大使館にも連絡をとってみたところ、積極的に相談にのってくれ、何とか免税の可能性を探ってみてくれるとのことだったが、 劇的な変化は期待できず、最終的に雪だるま号の購入に関する140万円の免税の問題は、ベラルーシ赤十字ミンスク本部のアントン・ロマノフスキー氏に委ねることになる。
 8月20日、ミンスクの本部でロマノフスキー氏と会談して、雪だるま2号購入に関する問題については、次のような対応をすることに決まった。
 まず雪だるま号の購入費用である300万円を、ベラルーシ政府が50パーセント以上の株を所有する銀行に預ける。同時に、その預けた300万円で購入する 雪だるま号の使用目的(検診団や現地の患者の移動手段)を記載した寄付申請書を提出する。
 そして、300万円の存在と購入する車の使用目的を明確にしたうえで、大統領府のルカシェンコ大統領に免税を認めてもらうための交渉が始まる、という手順である。
 一瞬、目の前が暗くなったように感じたのは、その交渉に、「今年いっぱいはかかる」と聞いたときだ。つまり、雪だるま号の購入は、来年以降になるということだ。
 信じられなかった。何でそんな時間がかかるのか。私は「来月いっぱい」と聞き違えたのではないかと思った。
 私たちが検診を行っているストーリンやブレストから、ミンスクまでは車で4時間程度。しかしバスや電車となると7時間近くかかる。 検診や治療のためミンスクを訪れる患者は、病院での検査や治療を終えた後、駅で夜が明けるのを待ち、それから帰途につく。その行程を、雪だるま号であれば日帰りで行き来できるのだ。 交通費の負担もない。
 雪だるま号によるそうした移動手段の確立は、医師や臨床検査技師が迅速に甲状腺ガンを発見するためのシステム作りと同様に、この7年間の取り組みを通して 実現した最も現地の患者に喜ばれる支援ではなかったか。「とても助かった」という現地の声(P9 西首さんのレポート参照)は、 支援活動に関わる者にとって心が震えるような喜びと達成感を与えてくれる。
 ああ、しかし、それならば何故、雪だるま2号が整うまでに、来年まで待たなければならないのか。せめて、冬が来る前に・・・。
 初代雪だるま号が30万キロを走破し、廃車になったのは1年前。それに、雪だるま2号の購入費用が集まるまでの時間を加えた期間、すでに現地の患者は待っている のである。来年までかかるということは、今年の冬もミンスクまでバスや電車で通わなければならないということになる。
 雪だるま2号の購入に向けて、300万円のカンパがようやく集まったとき、誰もがこれですぐに雪だるま2号がベラルーシの大地を走り出すことができると 思ったことだろう。今回のチェルノブイリ調査団の移動だって、当初は雪だるま2号を使って行う予定だったのだ。
 もどかしさは、募るばかりである。これが、国際間の支援の難しさというものなのだろうか。ある程度、こうしたもどかしさに関しては、 この7年間の取り組みのなかで慣れていたつもりだったが、今回の雪だるま2号をめぐるやり取りは、やはり心に堪えた。
 日本までの10時間という飛行時間を想い、それ以上に遠いこれからの支援を想い、またひとつ、溜息がこぼれる。
 今後の支援活動を継続していくうえで、超えていかなければならない課題を残して、今回の旅は終わった。

 チェルノブイリ支援運動・九州
 矢野 宏和
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