ゴメリの福祉工房「のぞみ21」スタッフを訪ねて
ブレスト市での甲状腺ガン検診終了後、首都ミンスクへ戻り、再びゴメリへ向かった。ゴメリ市にある福祉工房「のぞみ21」を訪問するためだ。1年前に訪問したときにも経営状態が厳しいと聞いたが、現在はさらに厳しくなっているようだ。工房内には事務所しかなく、昨年工房で働いていたスタッフたちは現在、各自の家に材料を持ち帰り、自宅でそれぞれの作業をするという状況だ。
調査団一行は経営者ナターシャさんとともに、工房スタッフのスベトラーナさんとターニャさんのお宅を訪問し、話を聞いた。
刺しゅう担当のターニャさん。現在36歳。7歳になる娘のユーリャちゃんと一緒にインタビューに応じてくれた。ターニャさんは10年くらい前からのぞみ21で働いている。背の高い女性で、若い頃はハンドボールなどのスポーツも得意だったそうだ。
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工房のぞみ21で働くターニャと娘のユーリャ |
彼女は26歳のときに脳卒中になり、それが原因で耳が悪くなった。原因はわからないが、高血圧になることも多い。神経を使う刺しゅう作業ということもあり、目が疲れ、めまいが起こることもよくあるという。またお子さんにも目に異常が見られるようだ。
ミシンでの縫製作業を担当するスベトラーナさん。かつて専門学校に通っていた経験もあり、のぞみ21では数少ないプロの一人だ。責任感が強く、任せられた仕事はたとえ体調が悪くても期限までに仕上げる努力をするという。ナターシャさんからの信頼も厚い。
彼女は13歳の娘を持つ母親でもある。娘さんの名前はカーチャさん。カーチャさんが小さい頃には販売用の子ども服のモデルをしてもらったりもした。
スベトラーナさん自身は健康だが、娘のカーチャさんは甲状腺の肥大が見られるという。また風邪を引いたりなど病気も多く、健康状態が不安定なのでとても心配している。汚染地域であるゴメリ州で暮らしているので、何かの病気にかかると、どうしても“チェルノブイリ”と関係があるのではないかと気にしてしまうそうだ。
「最近は物価が上がったりと生活は大変だが、何とかやっているという状況です。病気がちな娘のことを考えると、簡単に仕事に就くことはできない。だからのぞみ21で自分のできるペースで仕事をしています。」
のぞみ21で働くことは、障がいを持つ他のスタッフの役にも立てる。また彼らの働く姿を見ることで、彼女自身も元気をもらうことができるようだ。立場はそれぞれ違うが、スタッフがお互いにサポートし合っているということがよく伝わる。
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