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チェルノブイリ通信 No.71 (6)
2007年11月28日発行
行ってきました!初めてのベラルーシ
ゴメリの福祉工房「のぞみ21」スタッフを訪ねて
現地医師の成長と今後のチェルノブイリ支援の行方
ベラルーシでの検診に参加した医学生からの報告
甲状腺ガンの診断方法はほぼ完成!
いよいよ形になったこれまでの努力
医師の技術の向上と、移動検診システムの有効性
検診を受けた患者たちの声
今年で第4回目「チャリティヘアサロン・スネガビーク」  

ブレストにおける第7回検診、第27次調査報告
いよいよ形になったこれまでの努力。
ほぼ日本と同じ条件で診断できるように!

報告/渡會 泰彦(臨床検査技師/日本医科大学付属病院)

検診
顕微鏡で細胞を調べる渡會臨床検査技師

1. はじめに

 私は約1年ぶりに美しき街ベラルーシの大地に降り立ちました。昨年より少し早い検診のためか暖かく感じられました。

 今回は私たち日本医科大学の細胞検査士と学生が参加するようになって5年目となりますので、5年間の検診結果を含めご報告いたします。

 今回医療スタッフとしては、検査技師(細胞検査士)の私に加え、ボランテイアで参加し助手をしてくれた日本医大5年生の鈴木さんと瀧音さんの3名で2日間の甲状腺ガン検診に臨みました。

2. 検診の実際

 例年通り、事前に移動検診によりアルツール医師らにより結節性病変のあるグループを選んでいただき、受診していただきました。

 2004年からは細胞診のプレパラートなどを国外に持ち出すことを厳しく規制されていることから、今回も現地で仮診断を行うことになりましたが、昨年からは長年の支援の成果によりエコーガイド下の吸引穿刺と塗抹を全て現地の医師に任せることができましたので私たちは染色と診断に集中することができました。

 最初に参加した2003年の時点では、ほとんどの医師が単なる見学者であったことを思い出しますとこの急速な技術と意欲の向上には驚かされます。

 また、細胞のスクリーニング(ガン細胞を顕微鏡にて探し診断を下す)も支援で購入していただいた日本の顕微鏡を使用できましたので、ほぼ日本と同じ条件で診断することができました。 日本とベラルーシの共同の検診スタイルが完成したと言えるでしょう。

 検診当日は、私たちスタッフが到着する頃にはすでに受診者が朝早くから待合室で待っておられ、受診人数は2日間で38名でした。(結果は下記表参照)

3. 5年間の検診結果

検査結果

 5年間で228名の検診を行い、内26名が“悪性”(甲状腺がん)でした。また、“鑑別困難”のなかにも(がん)が含まれる可能性があります。

4. 現地の様子など

 今回は在ベラルーシ日本大使館を訪問させていただきましたが、丁度大使館の交代時期にあたっておりまして、ハプニングとして訪問日の朝にホテルのレストランで偶然着任前の松崎大使にお会いしましてお互い“お仕事ですか?”など世間話をした際に、大使館のほうに仕事できましたと言われたので、ひょっとしたら新大使?と思っていました。

 大使館で再会した際には“さきほどはどうも”と気軽に話しかけていただき、その後楽しく会話をすることができました。

 お話のなかで感じたことは、前任の小池大使も松崎新大使も非常にこの活動に協力的であることです。今までの支援運動の実績を認めていただいたものと思います。

 街並みはあいかわらず美しく、人々も幸せそうに見えました。経済的にも5年前に比べよくなっている印象を受けました。(特に若い人や子どもたちも多くみかけますので、日本に比べ国としての年齢のバランスも良いように思えます)

5.今後のために

 今回は“甲状腺がん”の手術を行うミンスクの臨床悪性腫瘍病院を訪問することもでき、デミチク教授にお話を伺いました。その中で、チェルノブイリ事故により甲状腺がんの発生は急速に増加したが、死亡率の増加は軽度であるとのお話が印象的でした。

 つまり、私たちが支援してきた検診などにより“がん”が発見され適切な治療を受けることができているということになります。

 ここでも、支援運動の果たしてきた役割が人々の健康にとって大きいものであったかがわかります。

 また、一昨年の検診で甲状腺癌が発見され、本年2月に本院で内視鏡手術を受けたアリョーシャ(21歳)にも再会できました。

 とても元気でベラルーシではまだ実施が困難な内視鏡手術を受けることができたことをとても感謝していましたし、首の傷はほとんどわからない状態になっていました。

検診
アリョーシャとの再会を喜ぶ渡會技師

 今後は細胞診の診断できる医師もしくは検査技師を養成することが重要課題となってきます。ミンスクの悪性腫瘍病院でも細胞診を診断できる教授は1名しかいないそうです。 

 ブレストには広島で研修したアリーナ医師(アルツール医師の奥さん)がいますが、現在3人目のお子さんの誕生により産休に入っており診断に困っているとのことです。

 ベラルーシ全体でも数人しか細胞診を診断できる人材はいないものと思われますので、細胞診教育の面での支援なども今後は必要になると考えます。

 経済的にも良くはなりましたが、高速道路ではベンツが走っている脇を自転車が通り、わき道では馬車が干草を運んでいるなどアンバランスな経済であるようにも感じました。これからも微力ながら良い検診ができるようにお手伝いさせていただきたいと考えております。

 追記:細胞診断のことをもっと詳しく知りたい方は、細胞検査士会ホームページをご覧下さい。一般向けの解説があります。

 
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