福岡教育大学での講演会報告
小山 浩一 (チェルノブイリ医療支援ネットワーク理事)
福岡教育大学(以下、福教大)に招かれて約30名の先生志望の学生のみなさんに講演をしてきました。チェルノブイリ医療支援ネットワーク会員の坂口馨子さんが福教大の出身という関係で実現したものです。
現在、日田市内の小学校に勤務し、「いのちのかがやき」をテーマに、チェルノブイリや水俣病を中心に、これまでつながってきた人々を子どもたちにつなげることを通じて「いのち」について考える授業を続けています。点数中心の「学力」ばかりが叫ばれる現在、子どもたちの「心」が蔑ろにされています。放射能障害や水俣病などを抱えながらも一生懸命生きる人々の姿を知り、励まし、励まされる関係をつくることなどを通して、子どもたちの真の「かがやき」を創っていきたいといつも考えています。そのためには、教師である自分がまず一歩を踏み出すこと。自分の目で耳で確かめ、人と直接つながって学び取ることから始めることです。借り物でない「中身」を子どもたちに伝えることです。あちこちに出かけ、多くのすばらしい人と出会い子どもたちにつなげてきた私の実感です。そのことを、学生のみなさんに実例をもとに伝えようとしました。
最近の例で言えば、現在の勤務校の5年生に、ベラルーシ・ゴメリ市にある工房「のぞみ21」のナターシャさん・ステパンさんご夫妻の孫ナターリャちゃんのことを伝えました。母ニーナさんを亡くし、今は祖父母と共に暮らすナターリャを励まそうと、5年生たちはみんなでたよりを書き、検診活動の際に現地に届けてもらいました。最近、ナターリャが5年生一人ひとりに(8人分ですが)たよりを書いてくれた物が届きました。何千キロを超えて心が通いました。
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日本からの手紙を読むナターリャちゃん |
また、12月の福岡市でのイベントにもゲストとして参加してくれた水俣市の作業所兼喫茶店「ほっとはうす」で働く胎児性水俣病の患者さんたち3人がはるばる学校まで来てくれて子どもたちと交流することができました。思い思いに伝えたい気持ちを習字で表し、お礼に贈ると、1月に水俣で開いた「ほっとはうす」のメンバーの習字の作品展に子どもたちの習字を一緒に展示してくれたそうです。ここでも心の交流が深まりました。
美しいベラルーシや水俣の風景、支援活動の様子、交流の様子などを写真で見てもらいながら学生さんたちに伝えましたが、どのくらい思いが伝わるだろうかと期待と不安が入り交じる中で話しました。しかし、届けられたみなさんの感想文を読んでたいへんに感動しました。真剣に聞いてくれただけでなく、教師としての自分のあり方まで考えてくれた人がたくさんでした。原発事故のことも水俣病のことも詳しいことを知った人が大部分でした。「知る」ことの大切さ、「伝える」ことの大切さをみんなが感じてくれていました。これからを担う子どもたちを育てる先生としてみなさんが活躍されることを願ってやみませんでした。
貴重な機会を下さった坂口さん、そして福教大の先生方に心からお礼を申します。
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