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チェルノブイリ通信 No.69 (2)
2007年4月26日発行
癌早期発見・早期治療のもう一歩先に…
・アリョーシャと過ごした2日間

チェルノブイリ、そこに在る真実
福岡教育大学での講演会報告
活動報告会レポート  

アリョーシャと過ごした2日間
手術後の東京観光

文  山口 英文(チェルノブイリ医療支援ネットワーク理事、通訳)

アリョーシャ
東京での観光を楽しむアリョーシャさんとアルツール医師

 今回の清水先生の内視鏡手術のために来日したアリョーシャさんのお見舞いに行ってきた。アリョーシャさんは私と会ったときは少し緊張気味の様子だった。

 もう帰国まで二日しかない。「どうしましょうか?」アリョーシャさんに聞くと、「東京は大きすぎて。何でも目新しくて、どうしたらいいか分からない。」と答えられてしまった。

 ベラルーシには海がない。そこで、アリョーシャさんとアルツール医師と一緒に、東京湾を水上バスで走るツアーに参加した。ちょうど東京湾クルーズの客船では火災訓練中で、意外な出会いにびっくり。

 アリョーシャさんはレインボーブリッジを見上げたり、お台場、船の博物館と次々に写真に撮って、「とてもよい思い出よ!最高!」と喜んでいた。

 今回の来日手術についてどうだったかとアリョーシャさんに尋ねてみると「夢のような東京の日々が過ぎました。多くの甲状腺患者の中から私を選んでくれて夢のような治療を受けられました。この事は必ずベラルーシの人々に伝えます。そして日本の人々が本当に親切にしてくれました。このお礼は何度も言っても足りません。」と何度も繰り返した。

 日本にあるものがベラルーシには無い。でもベラルーシにあるもので日本に無いものがいっぱいある。お互いが補ったらどんなに素敵だろうか。」と私がと言うと、「日本とベラルーシがずっと仲良く、もっと友好的になったらいいのにね。」とアリョーシャさんが言った。

 アルツール医師が少しシリアスに話し出す。「アリョーシャはピンスクの梱包工場で働いている。今、ベラルーシは輸出が順調であるから仕事も多いし、残業もしている。それに日本のような機械化が進んでいないからアリョーシャも力仕事が多い。甲状腺手術を受けてからの彼女の健康をしっかりと見ていく必要がある。確かに今までと違って診療所の設備・資材では条件は良くなったけど、最終的にはドクターのスキルが大事。日本で学び、自分でマスターしたこと、目の前の仕事に全力を尽くすよ。君たちという力強いパートナーがいるから大丈夫。でも、甲状腺ガンだけでなく乳ガンやその他のより、怖いガンにも対応していくべきだとは考えている。アリョーシャの給与は週でまだ50ドル程度。こんな人の場合、乳がん等が起きたら大変だ。治療・入院・診察はタダだけど薬代などは別だしね。もちろん甲状腺ガン以外は原発との因果関係が証明されていない。しかしこれらも協力しあっていきたい。現実に患者はいるのだし。そして豊富な症例をお互いで学べば双方の利益ともなれるよ。日本の皆と一緒に取り組んで医療も世界共通語だと思うようになったよ。」

 アリョーシャさんも明るく「仕事があればいいの。いろんな希望はその後ね。そう簡単に日本のようには発展しないし、また発展しても問題がありうることは想像できるわ。物質的な豊かさだけを追ったら不幸になることは、もう分かりきった事よ。」と言った。

 「でも、医学の発展は大事ね。これはいくら発展しても患者の立場からは足りるということはないと思うの。痛い、怖い、苦しいというものから救ってもらえる気持ちは病気にならないと分からない。」とも付け加えた。

 翌日、空港で肩を抱いて別れを惜しんだが、「またベラルーシで会いましょう!」の言葉に慰められた。アルツール医師の「医療は世界の共通語だよ。」という言葉がいつまでも残っていた。

 
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